資産運用でお金を増やすという意味では、外貨預金は全然ダメです。最初に、その理由を考えます。
そして、外貨預金をすると、銀行にとってはウハウハのはずです。ノーリスクで儲かってしまうからです。順に考察していきます。
外貨預金の金利
最初に、外貨預金の金利を確認しましょう。下の一覧をご覧ください。米ドルを1万ドル預ける場合の金利(年率)を書いています(データ取得日:2018年11月6日)。
普通預金: 0.35%
1か月定期: 0.40%
1年定期: 0.58%
普通預金: 0.20%
1か月定期: 0.20%
1年定期: 0.60%
実際に手元に入るのは、ここから税金を引いた額となります。税率は20.315%です。
金利収入目的だと、確実に損する
円の金利と比べると、外貨預金金利は圧倒的に高いです。そこで、外貨預金を始めたくなります。しかし、金利目的の場合、外貨預金をすると確実に損します。
なぜなら、物価が金利以上の速さで上昇するからです。下のグラフは、アメリカの物価上昇率を示したものです(Bureau of Labor Statisticsより引用。データ取得日:2018年11月6日)。
一番左は、調査対象となったすべての財・サービスの物価上昇率です。年率2.3%の上昇です。すなわち、今年100ドルである商品は、来年には102.3ドルになるという計算です。
では、ここで、日本の大手銀行で1年物定期預金をするとしましょう。100ドル預けたら、来年は100.60ドルくらいになります。税金を支払うので、正確には100.48ドルくらいです。
物価:100ドル
預金額:100ドル
物価:102ドル
預金額:100.48ドル
今、手元に100ドルがあるとします。もちろん、100ドルの商品を買えます。しかし、その100ドルを預貯金にすると、来年はその商品を買えなくなってしまいます。商品価格は102ドルだからです。手元には、100.48ドルしかありません。
要するに、外貨預金をすると、見た目の数字は増えますが、実質的に損していることになります。
金利目的で外貨預金すると、確実に損します。
さらに、スプレッドが劣悪です。FXを知っている人なら、とてもではないですが外貨預金はできません。さらに、外貨預金は預金保険の対象外です。外貨預金のどこが良いのか、さっぱり分かりません。
外貨預金で稼げるかどうか。それは、「円安になるかどうか」にかかっています。預金なのに、稼げるかどうかは、完全に運任せです。
知識が十分でないと、損する金融商品を自ら買うという結果になります。
外貨預金は、銀行にとって旨味あり
では、外貨預金は顧客にとって厳しい金融商品ですが、銀行から見て、どうでしょうか。これは、「とってもおいしくて止められない」という表現で良いのでは?と思います。
これは、自分が銀行を経営すると考えてみれば、分かります。
集めた外貨預金を、第三者に貸す
銀行の儲けの基本は、預金を集めて、それを別の誰かに貸すことです。金利の差額が収益になります。
日本国民から、物価上昇率よりも大幅に低い金利でお金を集めます。そして、海外の資金需要者に対して、貸します。金利の大きさは、貸し出す人によって変わってきます。
しかし、「物価上昇率+α」で貸すことは間違いないでしょう。
預金金利:0.2%~0.6%
差額:銀行の利益
銀行にとっては、ウハウハです。楽勝に儲かってしまいます。
しかし、銀行から見て、もっと簡単に稼ぐ方法があります。誰か別の人に貸すというのは、顧客管理や営業等が面倒くさいです。
米国債を買う
そこで、米国債を買ってしまいましょう。顧客の定期預金と同じ期間の米国債を買えば、「米国債の満期=顧客定期の満期」となって、満期のズレによるリスクを回避できます。
外貨預金金利:0.58%~0.60%
差額(銀行の儲け):2.00%~2.12%
お客さんから集めたお金で、米国債を買うだけ。それだけで、年利2%を確実に確保できます。銀行から見れば、これほど簡単に儲かる方法はないかもしれません。
米国債は安全度が高く、購入資金は顧客から来ています。円高リスクは、顧客が全部引き受けてくれます。
銀行はノーリスクで儲かります。顧客は、銀行に儲けてもらうために外貨預金をしているようなものです。しかも、円高リスクは顧客が全面的に引き受けます。顧客は太っ腹です。
銀行が簡単に儲かってしまう理由
最後に、確認しましょう。外貨預金で銀行が簡単に儲かってしまう理由は、何でしょうか。
簡単に分かります。「顧客にリスクを転嫁しているから」です。顧客がリスクを引き受け、銀行は儲けます。顧客がもらう金利は物価上昇率よりもはるかに低く、損です。
これを知った上で、それでも外貨預金をするというならば、それは仕方ありません。銀行に儲けていただきましょう。
銀行で外貨預金をするメリットを考えますと、なかなかありません。外国に送金する場合くらいでしょうか。
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