前回の記事では、知識がないと、知識がある人にお金を支払うことになるという話を書きました。逆に言えば、突き抜けた知識があれば、お金を集めることができます。
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お金は、知識がない人から知識がある人に流れる
カテゴリ「お金のルール」では、お金のルールについて考察していきます。 スポーツでもゲームでも何でもそうでしょうが、ルールを知って訓練を積むことが、その分野で成功するために必要です。お金も同様です。 知 ...
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今回は、お金を支払う場合、知識がないと余分にたくさん支払う必要があるという話をご案内します。知識があれば、支出を減らせます。
例があると分かりやすいです。そこで、国民健康保険と民間の医療保険の関係について考察します。
医療保険に入るべきか
私たちは、病気になったりケガをすれば病院に行きます。現役世代の場合、一般的には診療費の3割を負担します。
そこで、ふと不安になるかもしれません。「大きな病気にかかって、何か月も入院することになったらどうしよう?」です。この場合、知識が乏しい人は、民間の医療保険を調べます。
知識がある人は、自分が加入している公的な健康保険を先に調べます。
ここでは、国民健康保険だとしましょう。国民健康保険は、主に市区町村単位で運営されています。そこで、日本の中心である東京都新宿区の場合で確認しましょう(どの市区町村でも、おおむね同じ内容です)。
高額医療費支給制度
実際に要した医療費の3割負担が原則ですが、医療費が高額になる場合は、医療費を支給してもらえる制度があります。これを「高額医療費支給制度」と言います。
これを知っているかどうか、あるいは、自分が加入している健康保険を先に調べるかどうかで、この先の思考が大きく変わってきます。すなわち、調べないと、無駄な医療保険に加入する可能性があります。
東京都新宿区の場合、月額の医療費が高額になる場合の自己負担額の上限は、以下の通りです(抜粋)。
世帯の所得 | 3か月まで | 4か月目以降 |
901万円以上 | 252,600円+(医療費総額-842,000円)×1% | 140,100円 |
600万円~901万円 | 167,400円+(医療費総額-558,000円)×1% | 93,000円 |
210万円~600万円 | 80,100円+(医療費総額-267,000円)×1% | 44,400円 |
なお、所得とは、総所得金額から基礎控除(33万円)を除いた額です。
例えば、世帯の所得が700万円の人が、とんでもない大けがで入院したとしましょう。入院期間は3か月で、1か月目に大手術で200万円の費用が掛かったとします。入院費用自体は、毎月20万円だったとします。
この場合の負担額を概算しますと、以下の通りです。
2か月目:167,400円
3か月目:167,400円
合計:518,620円
大手術で200万円もかかるような入院でも、3か月で50万円くらいという結果になりました。
入院にかかる諸経費を追加しても、60万円あれば大丈夫そうです。
60万円は大金ですが、民間の医療保険に加入しなければならない額でしょうか。医療保険に加入しても、大きな病気やけがにならなければ、保険料は掛け捨てです。
それならば、貯蓄で何とかしようという判断もできるでしょう。
また、医療保険に加入しようという判断になっても、高額医療費支給制度を前提として考えることができます。この制度を知らないと、無駄に高額な保険に加入するかもしれません。
入院期間の実績
では、日本国民の入院期間はどれくらいでしょうか。厚生労働省「H26患者調査」のデータを引用して考察します(記事を掲載した時点で、平成26年のデータが最新です)。
平成26年9月に病院を退院した人数:125万4,600人
125万4,600人の入院期間は、以下の通りです。
- 0日~14日:67.0%
- 15日~30日:16.2%
- 1~3か月:12.6%
- 3~6か月:2.6%
- 6か月以上:1.6%
圧倒的多数の人は、2週間以内の入院です。3か月以内で96%くらいになっています。
しかし、3か月以上という人がいるので、少々不安かもしれません。そこで、どのような種類の疾病の人が長期入院になりやすいか、厚生労働省「H26患者調査」で確認しましょう。
- 認知症:376.5日
- 統合失調症など:546.1日
- アルツハイマー病:266.3日
上の一覧から判断しますと、精神関連が多いです。そして、主に高齢者だと分かります。
精神内科等の入院で必要な費用
そこで、神経内科の病院のホームページで、医療費を確認しましょう。「見立病院」です。
ホームページには、1か月の入院費の自己負担額は平均して7万円前後、と書いてあります。仮に1年間入院しても、100万円に満たない金額です。しかも、認知症等は高齢者が多いので、現役世代の場合は、考慮する際の優先度が低くなります。
老後を迎える前に100万円貯蓄すればOK、という判断ができるからです。
医療保険に加入すべきか
ここまで考察したうえで、ようやく「医療保険に加入すべきか」を考えることになります。「見送って貯蓄を作ろう」となる場合が少なくないのでは?と予想します。
ここでは、医療保険について考察しました。しかし、生命保険等でも同じです。最初に、自分が加入している保険制度や年金制度を調べて、どのような給付を受けられるか確認しましょう。
そして、現在の収入支出・資産の状況と照らし合わせて、生命保険に加入すべきかを検討します。
いきなり保険商品の情報から調べるのは、順序が違います。不必要な高額保険料を支払う結果になる可能性があります。
お金のルール
なお、この種の情報は、保険屋さんや銀行に聞いても、なかなか教えてくれないでしょう。なぜなら、正直に教えると、売上が落ちるからです。
私が銀行の営業に保険商品を紹介されたときも、いきなり保険商品の説明から入りました。
自分の資産を防衛するには、自分で知識を蓄えるしかありません。