筆者は、相場の世界を深く見てきました。その結果、FXで負ける個人投資家は、全体の9割くらいだと確信しています。
そして、残りの1割についても、何とかプラスになっているという人が大半です。本当に勝っている(生活できるレベルで儲かっている)のは、上位1%~2%くらいではないだろうか、と考えています。
金融先物取引業協会のレポート
そんな中、筆者の意見と全く逆のレポートが公開されました。金融先物取引業協会のレポートです。金融先物取引業協会とは、FX業者の業界団体です。FXユーザーに2017年の取引状況についてアンケートを実施し、その結果を公開しました。
そのレポートから、利益額の分布を抽出したのが、下の表です。
利益の大きさ | 割合(%) |
100万円以上 | 7.5% |
50万円~100万円 | 7.1% |
20万円~50万円 | 10.1% |
0円~20万円 | 35.6% |
△20万円~0円 | 28.4% |
△50万円~△20万円 | 5.9% |
△100万円~△50万円 | 2.2% |
100万円以上の損 | 3.2% |
すなわち、アンケートに回答した1,000名のうち、プラスの成績になったのは60.3%にもなります。
筆者は、FXで損する人の割合は9割だと確信しています。にもかかわらず、このアンケートでは、利益になっている人の割合が6割になっています。完全に逆の結果だと言って良いでしょう。
このアンケートを鵜呑みにするのは問題
しかし、このアンケートの結果が「いつでも常に」あてはまると考えると、おかしいぞ?という点があることに気づきます。
FXという相場で、全体の6割もの人が勝つとするなら、株や競馬や仮想通貨をやる人はいなくなり、ほぼ全員がFXに集合するのでは?という疑問です。
株も競馬も仮想通貨も、儲けるのは大変なことです。なのに、FXだけ6割もの人が勝つ。これはおかしいのでは?ということです。
また、「いつでも常に」6割もの人が勝つならば、日本国民の多くがFXに取り組んでいてもおかしくありません。収入が少なくて困っている人は、世の中に大勢いるでしょう。FXだったら、副業にもなりません。
しかし、現実は違います。FXをしている人は、株式等と比べて少ないでしょう。
では、このようなアンケート結果が出た「カラクリ」は何でしょうか。予想になりますが、考えてみます。
アンケートで、儲かった人が多くなった理由
儲かった人の割合が高くなった理由を考察します。
誰にアンケートをしている?
最初に確認したいのは、ここです。仮に、プロトレーダー1,000人に対してアンケートを実施しているなら、儲かった人はもっと高い比率になったでしょう。
そこで、アンケートの報告書を調べると、こんな文があります。
そして、アンケートの対象になった、現在取引者と過去取引者の比率は、以下の通りです。
- 現在取引者: 93.4%
- 過去取引者: 6.6%
過去FXをしていたけれど、今はもうしていないという人は、どういう人でしょうか。FXで稼いだ人でしょうか。それとも、損した人でしょうか。思いっきり儲かってつまらないから、FXをやめた…そういう人も、中にはいるかもしれません。
しかし、圧倒的大多数は、負けたからFXをやめたのでしょう。
そういう人が、アンケートから排除されています。これでは、勝った人の割合が高くなるのは当然です。
いつの損益についてのアンケートか
次に、いつの損益についてのアンケートか、も重要です。損益計算の対象期間が長くなればなるほど、負ける割合が高くなるでしょう。また、円安傾向にあるときは、利益も伸びやすいでしょう。
そして、暴落時を含む場合は、損失になった人が多くなると予想できます。
このアンケートは、2017年の損益についての調査です。そこで、日本のFXで圧倒的に取引量が多い米ドル/円について、値動きを確認しましょう。DMMFXのチャートです。白枠部分が、2017年の値動きです。
1月は円高気味でしたが、2月以降はレンジになっている様子が分かります。すなわち、取引で含み損が発生しても、損切りしないで我慢していれば、利食い可能な相場でした。
初心者やFXで継続的に勝てない人は、損切りをしたくない傾向にあります。2017年は、損切りしないのが正解でした。我慢していれば、為替レートが戻ってきたからです。
すなわち、初心者でも勝ちやすい(あるいは、大負けしづらい)相場でした。
この1年間だけの損益で調査しても、正確なデータを得られるとは思えません。2014年から2017年までの4年間という感じだったら、より正確なデータを得られたでしょう。
上のチャートにあります通り、大幅円安、大幅円高、レンジ・・・と、変化に富んだ値動きをしています。
2014年から2017年の範囲で調査したならば、下のような人々は損失を計上したと予想できます。
・損切りが上手でない人
顧客の損益データは、FX業者自身が持っている
そもそも、こんなアンケートを取らなくても、FX業者自身が顧客データを持っています。過去10年について、顧客成績を公表してしまえば、話は早いです。個人情報は出ないようにして。
FX業者のホームページを見ると、「・・・の期間について、顧客の××%が利益を出しています」という表示を見かけます。
それを、業界全体で過去10年分について公表すれば、確実です。アンケートにしないで、正確な数字の公表を期待します。
結論:今回のアンケートで、勝った人の割合が高いのは当然
以上、概観しますと、利益になった人の割合が高くなったのは当然だといえるでしょう。
むしろ、利益になった人の割合が高くなるようなアンケートなのに、6割しか勝っていないと表現する方が適切かもしれません。
私たちは、2017年だけの損益で勝っても、あまり意味がありません。FXをしてきた期間全体での損益が重要です。値動きが荒々しい時期を含めて全体で考えると、やはり負ける人は9割になるだろう、と考えています。
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FXで損する個人投資家は、本当に9割もいるのか
一つ前に投稿した記事で、FXをしている個人投資家の9割が負けているという趣旨を書きました(下のリンクです)。 9割も負けているという数字の根拠は? しかし、具体的に9割と書いているものの、「根拠は?」 ...
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