外貨建債券で稼ぐのは、とても難しいです。その理由は、下の5つにあります。
- 為替のスプレッド
- 債券価格のスプレッド
- 為替レート推移
- 物価上昇率
- 発行体の信用状態
順に見ていきましょう。
為替のスプレッド
外債を買う場合、円を外貨(米ドルなど)に交換することが多いでしょう。円と外貨を交換する場合の、買値と売値の差をスプレッドと言います。
業界最大手の野村証券を例にして、スプレッドの大きさを確認しましょう(2018年11月2日現在)。
ユーロ/円:150銭
ポンド/円:200銭
豪ドル/円:160銭
例えば、豪ドル建債券を買うために円を豪ドルに交換し、満期が来てから再び円に戻すと、手数料が160銭(1.6円)分かかります。豪ドル/円=80.00円だとすると、為替の手数料率は2%にもなります。
債券を買うための外貨両替だけで、元本の2%を手数料として持っていかれます。厳しい条件です。
ちなみに、FXの場合のスプレッドは、以下の通りです(GMOクリック証券)。
ユーロ/円:0.5銭
ポンド/円:1.0銭
豪ドル/円:0.7銭
FXのスプレッドの大きさは、外債を買う場合に比べて200分の1くらいでしょうか。この時点で既に、外債投資をするかどうか迷ってしまいます。
債券価格のスプレッド
債券の価格にも、為替レートと同じようにスプレッドがあります。
すなわち、現在の債券価格(市場価格)が90円だったら、私たち顧客が買うときは91円、売るときは89円という具合です。この価格差は、証券会社の収益源となります。
では、債券価格のスプレッドはどれくらい大きいか?ですが、顧客には分かりません。ホームページで公開されているのは、顧客が買う場合の価格だけだからです。
すなわち、このスプレッドは巨大だと容易に想像がつきます。価格に敏感な顧客に気づかれない程度に、広くしていることでしょう。
ちなみに、仮想通貨やFXの売買では、買値と売値が同時に表示されることが当然のように受け入れられています。これを「ツーウェイ表示」と言います。
債券の世界ではツーウェイ表示は存在せず、顧客の利益は脇に置かれています。
為替レートの推移
極めて難しいのは、為替レートの推移です。外貨を買った時よりも円安になれば、円建てで利益になります。しかし、円高だったら損してしまいます。
円高の大きさによっては、利息と合わせて考えても損になってしまいます。
しかし、為替レートを読むのは、極めて困難です。FXのプロトレーダーが日夜研究を重ねても、読むことは難しいです。
しかも、債券ですから、買ってから満期になるまで年単位になることが多いでしょう。年単位の先の為替レートを読みなさいと言われても、それは無理だという話です。
物価上昇率
そして、これも厳しいです。物価上昇率です。
例えば、この記事を書いている時点で、アメリカの物価上昇率は年率2%くらいあります。すなわち、今日100ドルである商品は、来年102ドルになるという計算です。
そこで、100ドルを使って金利で稼ぐ場合、1年後に102ドルよりも大きなお金にしなければなりません。
仮に、101ドルにしかならなかったら、今年買えた商品を来年買えないということになります。すなわち、見た目のお金は増えていますが、実質的には損しているということになります。
よって、仮に米ドル建て債券を買う場合、年率2%は必須となります。さらに、利子には税金がかかります。よって、年率2.5%は最低でも確保しないと、金利を受け取っても損になります。
債券発行体の信用状態
今までコストやリスクをたくさん書いてきましたが、これらをすべてクリアしたうえで、債券発行体が約束通り元利払いをしてくれるか、考えなければなりません。
国債ならば、倒産リスクを考えなくても良いかもしれません。しかり、利率が低くなります。
利率を高くしようと思えば、一般の会社の債券を買うことになるでしょう。すなわち、財務諸表を読める能力が必須です。
まとめ:外債で稼ぐのは、とても大変
以上をまとめましょう。
収益源
2 円安になるときの為替差益
コスト
2 債券価格のスプレッド
3 円高になるときの為替差損
4 税金
5 財務諸表分析に要する時間と精神力
外債で稼ぐことがいかに難しいか?が分かります。
外債投資でコストを少しでも減らすために
では、外債投資はやめた方が良いか?ですが、コストを減らす方法があります。
例えば、ひとたび円から外貨に換えたら、その外貨でずっと運用を続けることです。こうすることで、外貨売買のスプレッドによるコストを回避します。
また、ずっと外貨で運用しますから、円高・円安を考える必要も少なくなります。ただし、可能な限り円高のときに外貨投資を始める必要があります。
現在の為替レートが歴史的に見て円安か円高か?というのは、過去20年~30年のチャートを見ればだいたい分かります。
こうしてコストを削減できますが、外債投資は難しいでしょう。
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